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系統用蓄電池の火災|国内外の事例・原因・安全対策と保険
公開日:2026年10月13日/更新日:2026年10月13日
系統用蓄電池と同じリチウムイオン電池を使う蓄電池設備の火災は、国内でも起きています。
2024年3月には、鹿児島県の太陽光発電所に併設された蓄電池の建屋が爆発して全焼し、消火にあたった消防隊員4名が負傷しました。
火災は、リチウムイオン電池の熱暴走(電池の温度が異常に上がって止まらなくなること)から始まり、いったん燃え広がると水をかけにくく、設備が元に戻るまで長く運転が止まります。
そのため、案件を選ぶ段階で、設備の安全対策と保険の条件を確かめておくことが欠かせません。
この記事では、国内外の火災の事例と原因、事業への影響を整理したうえで、案件や施工会社を比べるときの確認点と、保険での備え方を解説します。
記載の情報は2026年10月13日時点のものです。

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系統用蓄電池の火災事例
系統用蓄電池や、発電所に併設された蓄電池の火災は、国内でも海外でも起きています。
国内の件数をまとめた公的な統計は2026年10月時点で見当たりませんが、海外には事故の頻度を集計したデータがあります。
この章の内容は、次の3つです。

国内の事例
国内では、2024年3月27日に鹿児島県伊佐市の太陽光発電所で、蓄電池とPCS(電気を直流と交流に変換する装置)を置いた建屋から白煙が上がりました。
通報から約40分後の18時50分ごろに建屋で爆発と火災が起き、消防隊員4名が負傷しました。
鎮火は翌日の14時35分です。
この発電所は出力1,000kWの太陽光発電所で、併設された蓄電池の容量は7,000kWh相当でした。
建屋と、建屋の外にあった受変電設備(電気の電圧を変える設備)は全焼しました。
さらに、爆発で建屋の壁や屋根の一部が飛び、太陽光パネル5枚が壊れたうえ、敷地の外にも破片が飛んでいます(人や物への被害は確認されていません)。
設置者の報告では、蓄電池から出火した可能性があるとされました。
この事故を受けて、経済産業省は2024年4月に蓄電池設備の設置者と電気主任技術者(電気設備の保安を監督する国家資格者)に向けて、メーカーの協力を得た点検の徹底を求めました。
※参照:蓄電池設備における爆発・火災事故及びその対応について(電気設備自然災害等対策ワーキンググループ 資料3、2024年9月10日)p.1・2|経済産業省
※参照:発電所等に施設される蓄電池設備の保安確保の徹底について(2024年4月26日)|経済産業省
海外の事例
海外の大きな例は、2025年1月16日に米国カリフォルニア州モスランディングの出力300MWの蓄電所で起きた火災です。
施設にあった約10万個のリチウムイオン電池のモジュールのうち約55%が損傷し、火は1月18日まで続きました。
その後も2025年2月18日に火が上がり、2026年9月18日には残っていた電池の一部が再び燃えて、周辺に屋内退避の指示が出ました。
電池の撤去と建屋の解体が終わるのは、2027年半ばの見込みです。
※参照:EPA Begins Final Phase of Post-Fire Battery Cleanup at Moss Landing(2026年9月8日)|米国環境保護庁
※参照:Moss Landing Battery Fire Updates|米国環境保護庁
事故の頻度
系統用蓄電池の事故の割合は、導入量あたりで見ると大きく下がっています。
世界で起きた事故を集計すると、導入量1GWあたりの事故の件数は、2018年から2023年の間に97%減りました。
一方、事故の件数そのものは2018年が16件、2023年が15件で、導入量が増えた分、件数はあまり減っていません。
事故が起きやすいのは、設備ができて間もない時期です。
設備の年数が分かっている事故のうち72%は、建設中や試運転中、または運転開始から2年以内に起きています。
原因が分かった26件を原因別に分けると(2件は原因を2つに数える)、部品の組み合わせや施工・試運転の不備が10件(36%)で最も多くなっています。
故障が起きた部分で見ると、電池から起きたのは3件(11%)で、ほとんどは制御装置や周辺の設備でした。
ただし、この集計は公開された報道や資料をもとにしているため、すべての事故を網羅しているとは限りません。
系統用蓄電池が火災になる原因
系統用蓄電池の火災の始まりは、電池の温度が異常に上がって止まらなくなる「熱暴走」です。
短絡(ショート)や過充電・過放電などで電池の中の温度が異常に上がると、電解液(電池の中を満たしている液体)が分解して白煙と燃えやすいガスが出て、発火や破裂に至ります。
温度が上がるきっかけは、次の5つです。
- 内部短絡:異物の混入やセパレーター(正極と負極を隔てる膜)の不良で、電池の中で正極と負極がつながる
- 外部短絡:電池の外で正極と負極がつながる
- 過充電:電解液と負極が反応してセパレーターが溶け、短絡する
- 過放電:負極から溶け出した銅がセパレーターを突き破り、短絡する
- 外力:圧迫・振動・落下の衝撃で電池が変形する
系統用蓄電池は、多数の電池をラックやコンテナに積み重ねています。
伊佐市の事故では、1つのラックに12個のモジュールが積まれており、最も激しく燃えていたラックが火元となった可能性があるとされ、建屋内の蓄電池は広く損傷していました。
そのため、1つの電池の熱暴走が隣の電池へ燃え移る類焼を防げるかどうかが、被害の大きさを分けます。

※参照:蓄電池設備における爆発・火災事故及びその対応について(電気設備自然災害等対策ワーキンググループ 資料3、2024年9月10日)p.2・3|経済産業省
火災が事業に与える影響
火災の損失は、燃えた設備の修理代だけでは済みません。
消火に時間がかかり、復旧までの長い停止と、周りへの被害が事業に響きます。
影響は、次の3つに分けて見ておきます。
水をかけにくく鎮火に時間がかかる
伊佐市の事故では、短絡や感電、水との反応のおそれがあったため、消防は放水による消火ができませんでした。
そこで施設の電源を切り、自然に火が収まるのを待ったため、通報から鎮火まで約20時間かかっています。
※参照:大規模太陽光発電施設での火災事例【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP(2024年5月)|産業技術総合研究所
復旧まで運転が止まる
火が消えても、すぐに運転を再開できるわけではありません。
モスランディングの蓄電所では、火災から1年8か月がたった2026年9月時点でも、損傷した電池の撤去が続いています。
運転が止まっているあいだも、借入れの返済や土地代などの支払いは続く一方、電力市場での売上は入りません。
※参照:EPA Begins Final Phase of Post-Fire Battery Cleanup at Moss Landing(2026年9月8日)|米国環境保護庁
周りの人や消防隊に被害が及ぶことがある
伊佐市の事故では消防隊員4名が負傷し、爆発で飛んだ建屋の破片は敷地の外にも届きました。
また、米国環境保護庁は、リチウムイオン電池の火災ではフッ化水素などの有毒なガスや燃えやすいガスが出ることがあると注意を呼びかけています。
周りの人や建物に被害が出れば、事業者が賠償を求められることもあります。
※参照:EPA Begins Final Phase of Post-Fire Battery Cleanup at Moss Landing(2026年9月8日)|米国環境保護庁
系統用蓄電池の安全対策と規格
安全対策の組み方は、熱暴走を起こさせない対策と、起きても燃え広げない対策の2段です。
そのうえで、安全規格への適合と消防への届出で、対策が基準を満たしていることを確かめます。
見るところは、設備の対策と、規格・届出の2つです。
設備の安全対策
熱暴走を起こさせない対策の中心は、BMS(電池の電圧や温度を見張り、異常があれば止める装置)と、空調・冷却による温度の管理です。
電気設備の技術基準の解釈でも、発電所や蓄電所の蓄電池には、過電圧・過電流や制御装置の異常のときに自動で電路から切り離す装置を付けることになっています。
さらに、起こさせない対策と燃え広げない対策にあたる次の3つは、2024年9月に技術基準で明確にする候補になりました。
- 短絡を防ぐ措置
- 蓄電池システムの中に耐火性の仕切りを設けるなど、熱暴走と類焼を防ぐ措置
- 可燃性ガスを検知して知らせる装置
その後、2025年11月20日に電気設備の技術基準の解釈が改正されました。
この改正で、発電所や蓄電所に置くリチウムイオン電池は、JIS C 8715-2(産業用のリチウムイオン電池の安全性を定めた規格)の型式試験に適合するものであることが求められています(第44条の2)。
新しく設けられた条文は型式試験への適合を求めるもので、上の3つを1つずつ定めたものではありません。
運転を始めたあとの点検も欠かせません。
点検で確かめる主な項目は、次の8つです。
- 結露やさび
- 異音・異臭
- 電気が流れる部分のほこりの蓄積
- 漏電や短絡
- 過充電や過放電
- 異常な温度上昇
- 蓄電池の容量の低下
- 温度上昇などを感知する保護装置の動作
また、浸水や地震で電池が壊れても発火するおそれがあるため、用地を選ぶ段階でハザードマップを確かめておく必要があります。
※参照:蓄電池設備における爆発・火災事故及びその対応について(電気設備自然災害等対策ワーキンググループ 資料3、2024年9月10日)p.6|経済産業省
※参照:発電所等に施設される蓄電池設備の保安確保の徹底について(2024年4月26日)|経済産業省
※参照:公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン(第1版、2026年5月14日)|製品評価技術基盤機構
※参照:電気設備の技術基準の解釈の一部を改正する規程 新旧対照表(2025年11月20日施行)第44条の2|経済産業省
安全規格と消防の届出
容量が20kWhを超える蓄電池設備は、市町村の火災予防条例にもとづき、消防への届出が必要です。
2024年1月1日から、蓄電池設備の規制の単位が「Ah・セル」から容量(kWh)に変わり、区分は次のとおりになりました。
| 蓄電池設備の容量 | 消防の基準への適合 | 消防への届出 |
|---|---|---|
| 10kWh以下 | 不要 | 不要 |
| 10kWh超20kWh以下 | 消防の基準か、出火を防ぐ措置をした規格品のどちらかに適合 | 不要 |
| 20kWh超 | 必要 | 必要 |
伊佐市の事故の蓄電池が7,000kWh相当だったように、系統用蓄電池の多くは20kWhを大きく超えます。
また、2025年11月20日に施行された電気関係報告規則の改正で、容量が20kWhを超える蓄電池(電力貯蔵装置)は、事故が起きたときの国への報告の対象になりました。
屋外の蓄電池設備は、総務省消防庁が示す条例の例では原則として建築物から3m以上離すことになっており、延焼を防ぐ措置をした設備はこの離隔が要りません。
ただし、実際の基準は市町村ごとの条例で決まるため、設計の段階で管轄の消防本部に確認します。
安全規格の代表は、JIS C 8715-2 と、電力系統につなぐ蓄電システムの安全要求を定めた JIS C 4441 です。
このうち JIS C 8715-2 は、前の項で触れたとおり、2025年11月20日から発電所や蓄電所のリチウムイオン電池が型式試験で適合を求められる規格です。
JIS C 4441 は容量20kWhを境に小規模と大規模を分けており、消防庁も区分を見直す際にこの区分を参考に挙げています。
※参照:蓄電池設備に係る基準の改正について|仙台市消防局
※参照:定置用蓄電システム等電力貯蔵システムの普及拡大に向けた調査 調査報告書(2026年3月31日)p.218「火災予防条例(例)における蓄電池設備への規定」|経済産業省
※参照:蓄電池設備の規制の見直しについて(蓄電池設備のリスクに応じた防火安全対策検討部会 第1回 資料3-1、2022年7月26日)|総務省消防庁
※参照:電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き|経済産業省
案件・EPCを選ぶときに確かめること
案件やEPC(設計・調達・施工を一括で請け負う会社)を比べるときは、安全対策と事故のときの負担を、説明資料と契約書で確かめます。
価格や想定の収益だけを並べても、安全設備や監視の体制が違えば同じ条件の比較になりません。
確かめる項目は次の6つです。
| 確かめる項目 | 見るところ |
|---|---|
| 電池・設備の型式と規格 | JIS C 8715-2・JIS C 4441 などへの適合と、第三者による認証の有無 |
| 燃え広がりを防ぐ設計 | 電池の区画や耐火性の仕切り、コンテナとコンテナの間の距離(離隔) |
| 消火・検知の設備 | 煙・温度・可燃性ガスの検知と、消火設備の種類 |
| 消防との協議と届出 | 管轄の消防本部と協議したか、20kWh超の届出の予定 |
| 監視と点検の体制 | 遠隔監視の有無と、誰がどの頻度で点検するか |
| 事故のときの負担 | 修理費・止まっている間の損失・周りへの賠償を誰が負い、どの保険で備えるか |
同じ規模で価格に差があるときは、その差が安全設備や監視の有無から来ていないかも聞いておきます。
検討中の案件の安全対策を比べたい方には、チクデンが条件に合う事業者を紹介します。
系統用蓄電池の火災保険
保険で確かめる範囲は、設備の損害、止まっている間の損失、周りへの賠償の3つです。
設備の損害を補う火災保険だけでは、復旧までの売上の減少や周りへの賠償はまかなえないためです。
補償の種類と、契約の条件で確かめることの2つに分けて見ます。
火災で備える3種類の補償
企業向けの保険で火災に備える補償は、次の3種類です。
| 補償 | 備える損害 |
|---|---|
| 財物の補償(火災保険) | 火災・爆発などで壊れた蓄電池・PCS・建屋などの損害 |
| 休業の補償(費用・利益保険) | 事故で運転が止まったことによる利益の損失などの間接的な損害 |
| 賠償責任の補償(施設賠償責任保険) | 施設の管理の不備などで、他人にけがをさせたり他人の物を壊したりして、法律上の賠償責任を負ったときの損害 |
※参照:産業保安に関する損害保険会社の取組について(産業保安基本制度小委員会 第4回 資料2-2、2021年5月18日、東京海上日動火災保険)p.2|経済産業省
保険の契約で確かめること
保険に入っているかどうかだけでなく、どこまでが補償の対象かを契約の条件で確かめます。
企業向けの火災保険の例では、水災・地震・屋外の設備・休業損失の4つが、基本の補償とは別に付ける特約です。
確かめておきたいのは、次の4点です。
- 補償の対象:屋外のコンテナに収めた電池、PCS、受変電設備まで含まれるか
- 保険金額と免責金額(自己負担する額)
- 休業損失を補う期間:復旧が1年以上かかっても足りるか
- 水災・地震で壊れた場合も補償されるか
案件を買う場合は、販売会社やEPCが入る保険と、運転を始めてから自社で入る保険の範囲が、どこで切り替わるかも確かめておきます。
※参照:総合事業者保険(スマートプロテクト)パンフレット(2017年10月版)p.2・6〜9|AIG損害保険
系統用蓄電池の火災に関するよくある質問
低圧の系統用蓄電池も消防への届出が必要ですか?
低圧でも、蓄電池の容量が20kWhを超えれば届出が必要です。
低圧・高圧は出力(kW)による電力会社との接続の区分で、消防の区分は容量(kWh)で決まるため、出力50kW未満の低圧でも届出の対象です。
蓄電所を作るとき、近くの住民への説明は必要ですか?
全国一律の義務はありませんが、市町村のガイドラインや開発許可の手続きで求められることがあります。
たとえば福島市では、非常時の対応や維持管理の計画を住民に説明する事項として、ガイドラインで定めています。
※参照:福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン(2026年5月13日制定)|福島市
系統用蓄電池の火災についてまとめ
まずは検討中の案件の説明資料で、熱暴走を起こさせない対策と燃え広げない対策が、どの規格への適合で裏づけられているかを確かめてください。
あわせて、管轄の消防本部との協議がどこまで進んでいるかを、販売会社やEPCに聞いてください。
保険は、設備の損害、止まっている間の損失、周りへの賠償の3つが補償に入っているかを、契約の条件で確かめておきます。
安全対策まで含めて案件や事業者を比べたい方には、チクデンが条件に合う事業者を紹介します。
土地・権利をお持ちの方のご相談も受けています。
