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系統用蓄電池の住民説明|自治体ごとの求めと事業への影響
系統用蓄電池を設置する際の住民説明は、全国一律で義務づけられているものではありません。
ただし、設置する自治体のガイドラインや開発許可などの手続きによって、住民説明を求められる場合があります。
説明が必要な範囲も自治体によって異なり、確認した例では太田市がおおむね50m以内、福島市がおおむね300m以内です。
また、住民から出た意見への対応次第では、事業のスケジュールに影響が出ることもあります。
この記事では、系統用蓄電池の住民説明が必要になるケースや自治体ごとの違い、説明する内容と時期、住民の理解を得られない場合の事業への影響を解説します。
記載の情報は2026年10月7日時点のものです。

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系統用蓄電池の住民説明が求められる場面
系統用蓄電池を設置するだけで、全国一律に住民説明が必要になるわけではありません。
住民説明が必要になるかどうかは、主に設置する市町村のガイドラインや開発許可などの手続きによって決まります。
ただし、FIT/FIPの認定を受けた太陽光発電所に蓄電池を併設する場合は、国の制度によって説明会や事前周知が必要になることがあります。
この章の内容は、次の3つです。
国の説明会の制度とその対象
再エネの発電を行わず、FIT/FIPの認定を受けない系統用蓄電池だけの事業は、国の説明会の制度の対象ではありません。
国の説明会の制度は、再エネ特措法(再生可能エネルギーの固定価格買取制度などを定めた法律)がFIT/FIPの認定の要件として定めたもので、認定を受けない事業には関係しません。
この制度により、2024年4月1日から、大規模な設備などは原則として認定申請日の3か月前までに説明会を開くことになりました。
それ以外の小規模な設備のうち対象となるものも、100m以内の住民にポスティングなどの事前周知措置(説明会の代わりに書面などで知らせる方法)を行います。
なお、FIT/FIPの認定を受けた太陽光発電所に蓄電池を併設する場合は、認定計画の変更の内容によって、変更認定申請の前に説明会か事前周知措置が必要です。
※参照:再エネ特措法改正関連情報 令和5年度改正|資源エネルギー庁
自治体のガイドラインと取り扱い
住民説明の範囲や内容は、市町村がそれぞれ独自に定めています。
系統用蓄電池を対象にした文書を確認できた自治体の例は、次の3つです。
| 自治体 | 文書と時点 | 説明する範囲 | 主な求め |
|---|---|---|---|
| 群馬県太田市 | 農地転用を伴う蓄電池施設の設置に関する取り扱い(2026年1月9日施行、太田市農業委員会) | 蓄電池施設からおおむね50m以内の地域住民 | 説明会等を開き、誠意をもって合意形成に努める。騒音はおおむね45デシベル以下に抑えるよう努める |
| 栃木県さくら市 | 系統用蓄電池(蓄電所)を設置する際の近隣住民等への配慮について(2026年8月13日更新) | 地元の行政区長に相談して決める | 周辺住民への説明会の開催と、騒音防止の対応をお願いする |
| 福島県福島市 | 福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン(2026年5月13日制定) | 事業区域の境界からおおむね300m以内の住民、土地・建物の所有者など | 形式的な説明会に留まらない合意形成。説明の経過を報告書で市に出す |
このうち太田市の取り扱いは、農地転用(農地をほかの用途に変える手続き)を伴う場合に農業委員会が示したものです。
また、福島市は届出の様式や説明会の進め方まで定めています。
このように求め方が大きく違うため、住民説明が必要か、誰に説明するかは、候補地の市町村への確認が欠かせません。
※参照:農地転用を伴う蓄電池施設の設置に関する取り扱い(2026年1月9日施行)|太田市農業委員会
※参照:系統用蓄電池(蓄電所)を設置する際の近隣住民等への配慮について(2026年8月13日更新)|さくら市
※参照:系統用蓄電池(福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン)|福島市
開発許可の手続き
市街化調整区域(市街地を広げることを抑える区域)などで開発許可が必要になる案件では、その手続きの中で住民説明を求められる場合があります。
ただし、すべての系統用蓄電池に開発許可が必要なわけではなく、都市計画法上の扱いは設備の位置づけによって異なります。
実際に、経済産業省の委託調査では、市街化調整区域での建設に住民説明会の開催が義務づけられている、という事業者の回答がありました。
一方で同じ調査は、電気事業法上の発電事業に当たる系統用蓄電池について、都市計画法の開発許可の対象外と考えられると整理しています。
これに対して国土交通省の技術的助言(2025年4月8日付)では、電気事業の用に供する電気工作物に当たらず危険物を含む系統用蓄電池は、開発許可が必要な「第一種特定工作物」(危険物の貯蔵に使う工作物など)に当たり得るとしており、千葉市などはこの考え方に沿って扱いを定めています。
※参照:令和7年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業 定置用蓄電システム等電力貯蔵システムの普及拡大に向けた調査 調査報告書(2026年3月31日、三菱総合研究所)p.195・200・220|経済産業省
※参照:系統用蓄電池の開発許可制度上の取扱いについて(2025年9月11日更新)|千葉市
住民説明で説明する内容
太田市・さくら市・福島市の文書から整理すると、説明会で扱う主な内容は、事業の計画のほかに、騒音、火災と安全対策、雨水・土砂と景観、事業終了後の撤去の4つです。
なかでも福島市のガイドラインは、説明する事項として、土地利用計画、土砂災害の防止、生活環境と景観の保全、維持管理と撤去の計画、非常時の対応などを細かく挙げています。

1.騒音
騒音については、設備の音がどの程度になるかと、音を抑える対策を示します。
騒音の対策は太田市とさくら市のどちらの文書にも出てくる項目で、特に太田市が示す目安はおおむね45デシベル以下(騒音規制法などを参考にした値)です。
そのため、設計の段階で音の大きさを確かめ、配置図とあわせて説明できるようにしておきます。
2.火災と安全対策
火災については、消防の基準に合わせた設備の配置と、非常時の対応が説明の中心です。
蓄電池設備の置き方や届出は、設置場所の市町村の火災予防条例で決まります。
たとえば総務省消防庁が示す条例の例では、屋外の蓄電池設備を原則として建築物から3m以上離すこと(一定の要件を満たす設備は例外あり)と、容量が20kWhを超える蓄電池設備を消防長(消防署長)に届け出ることが定められています。
ただし、実際の基準は市町村ごとの条例によるため、設計の段階で管轄の消防本部への確認が必要です。
※参照:定置用蓄電システム等電力貯蔵システムの普及拡大に向けた調査 調査報告書(2026年3月31日)p.218「火災予防条例(例)における蓄電池設備への規定」|経済産業省
3.雨水・土砂と景観
雨水と土砂、景観については、雨水の排水の計画、土砂の流出を防ぐ対策、周りから見た設備の様子の3つを示します。
このうち雨水と土砂の対策は太田市が、景観を守る方策は福島市が求めている項目です。
なお、福島市では事前協議の書類に排水計画の図面と雨水排水の計算書を添付するため、これらをそのまま雨水の排水の計画の説明に使えます。
4.事業終了後の撤去
撤去で示す内容は、事業を終えたときに誰の責任でどのように設備を撤去するかです。
太田市も、事業者の責任で速やかに蓄電池施設を撤去するよう求めています。
さらに福島市では、事前協議の段階で撤去計画書を出し、運用を終えたときと撤去を終えたときにも届出が必要です。
そのため、撤去の方法も計画の最初に決める項目の一つです。
※参照:福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン(2026年5月13日制定)|福島市
※参照:農地転用を伴う蓄電池施設の設置に関する取り扱い(2026年1月9日施行)|太田市農業委員会
住民説明を行う時期
福島市のガイドラインでは、市に事前協議書を出したあと、電力会社との接続契約を申し込む前に、住民への説明会を開きます。

具体的な順番は、市への事前相談と電力会社への接続検討の申込みが最初です。
説明会の翌日からおおむね30日以内は住民が意見書を出せる期間なので、事業者はその意見に回答したうえで「地域との協議経過等報告書」を市に出し、そのあとで接続契約の申込みに進みます。
また、工事に着手する1か月前までには着手届も出します。
太田市の取り扱いも、農業委員会との協議は計画地を選ぶ段階、説明会は事業の前という順番です。
ただ、こうした手続きには時間がかかり、経済産業省の委託調査では、提出書類の準備に1〜2年ほどかかる自治体もあると事業者が答えています。
※参照:福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン(2026年5月13日制定)p.10〜12・24|福島市
※参照:定置用蓄電システム等電力貯蔵システムの普及拡大に向けた調査 調査報告書(2026年3月31日)p.220|経済産業省
住民の理解を得られない場合の事業への影響
住民説明で出た意見に応えきれないと、費用が増えたり工程が遅れたりして、事業が進まなくなる場合があります。
実際、経済産業省の委託調査では、市街化調整区域で開発許可が必要な場合に、説明会で挙がった異議への回答・対応で費用が増え、開発スケジュールが遅れて開発に至らないことが非常に多い、というのが事業者の声です。
また、福島市のガイドラインは、市が報告書の内容を地域に確かめて合意形成が十分かを判断し、対策が不十分な場合は事業の中止を要請することもあるとしています。
一方、太田市の取り扱いは「合意形成に努める」、さくら市は「お願い」の形で、どちらも住民の同意そのものを条件にする書き方ではありません。
このように自治体によって影響の大きさが違うため、候補地を選ぶ段階で、その自治体の求めと周りの住宅の位置を確かめておくと、住民対応にかかる期間と費用を工程に入れられます。
候補地に合うEPC(設計・調達・施工を請け負う会社)や開発事業者を探したい、といったご相談に対応しています。
系統用蓄電池の住民説明に関するよくある質問
取り上げる質問は、低圧の場合の扱いと、説明の範囲・回数の決め方の2つです。
低圧(50kW未満)でも住民説明は必要ですか?
低圧でも、住民説明を求められる場合があります。
太田市・さくら市・福島市の文書は、いずれも出力の大きさで対象を分けておらず、低圧の系統用蓄電池も同じ扱いです。
説明する範囲や回数は誰が決めますか?
範囲は、自治体の文書で決まっている場合と、自治体側と相談して決める場合があります。
たとえば福島市はおおむね300m以内が基本で、事業者がその範囲を「近隣住民等範囲説明書」で市に出す決まりです。
一方、さくら市では、地元の行政区長に相談して決めます。
これに対して回数は、この3市の文書には定めがありません。
愛媛県西条市が蓄電池を含む事業の公募で示した仕様書でも、範囲・時期・回数は市と事業者の協議で決めるとしています。
※参照:福島市系統用蓄電池設備に関するガイドライン(2026年5月13日制定)p.4|福島市
※参照:西条市地域マイクログリッド構築及びオフサイトPPA方式による太陽光発電設備導入事業 公募型プロポーザル仕様書(2025年10月)|西条市
系統用蓄電池の住民説明についてまとめ
まずは候補地を決める前に、その市町村に系統用蓄電池を対象にしたガイドラインや取り扱いがあるか、開発許可が要るかを確かめてください。
特に福島市のように、接続契約の申込みより前に説明会と報告書の提出を求める自治体では、住民説明の期間がそのまま事業の工程に入ります。
土地・権利をお持ちの方のご相談も受けています。
