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系統用蓄電池の利回りは何%?投資回収年数と数字の確かめ方
系統用蓄電池の利回りは、2025年3月の経済産業省の検討会の試算でも、20年間のIRR(お金が戻る時期まで含めた利回り)でマイナス12.0%からプラス23.6%まで分かれます。
幅が出る原因は、収入源と建設費の置き方の違いです。
投資回収年数も、どの利回りを使い、どんな前提を置いたかで変わる点は同じです。
この記事では、提案された利回りの数字を見るときに疑うべき前提を整理したうえで、複数の提案を同じ物差しで比べる方法を解説します。
対象は、高圧の系統用蓄電池への投資を検討している法人の方です。
内容は2026年10月時点の公開情報に基づくものです。

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|---|---|
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系統用蓄電池の利回りと投資回収年数の目安
系統用蓄電池の利回りと投資回収年数は、公開されている試算でも前提によって大きく分かれ、目安を1つの数字に絞れません(2026年10月時点)。
手元の提案の数字は、同じ種類の利回りで、前提の近い試算と比べて位置を確かめます。
公開情報にみる利回りの幅
経済産業省の検討会で示された試算では、系統用蓄電池の20年間のIRRの幅は、マイナス12.0%からプラス23.6%です(2025年3月7日公表)。
試算の蓄電池は出力の3時間分の容量を持ち、20年間の運転で容量が毎年1%ずつ下がる前提です。
そのうえで、建設費を1kWhあたり3万〜8万円の6通りに置いています。
なお、補助金を差し引く前提は書かれていません。
試算では、卸電力市場と容量市場、または需給調整市場と容量市場の2通りの組み合わせで収入を計算しています。
卸電力市場は電気を売り買いする取引所で、安い時間に充電した電気を高い時間に放電したときの値差(価格の差)が収入になります。
需給調整市場は電気の需要と供給のずれを埋める力(調整力)を、容量市場は将来の供給力を取引する市場です。
このうち需給調整市場では、調整力を出せる量と単価を示して応札(入札)し、落札した分が収入になります。
収入源の組み合わせごとに、運用と市場価格の前提とIRRを並べると次のとおりです。
| 収入源の組み合わせ | 運用と市場価格の前提 | 20年間のIRR |
|---|---|---|
| 卸電力市場の値差と容量市場 | 毎日1回充放電。値差は1kWhあたり4.45〜17.54円の3通り | −12.0%〜14.9% |
| 需給調整市場と容量市場 | 1日3〜6時間分を応札し6割が落札。単価は1kW・1時間5〜15円の3通り | −8.5%〜23.6% |
同じ試算の中で幅が出る理由と、資料ごとに利回りが違う理由は、系統用蓄電池の利回りが資料で大きく違う理由で説明します。
チクデンが確認した他社の高圧・2MW・8MWh級の案件の資料では、利回りの分母になる投資額は総額6億円台後半でした(チクデン調べ、2026年9月時点)。
1kWhあたりの額と試算の建設費との違いは、初期費用に含める範囲と補助金で示します。
※参照:2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(2025年3月7日、作成:三菱総合研究所)p.35・38・44・45/経済産業省
投資回収年数の目安
系統用蓄電池の投資回収年数は、投資額を毎年の収入で割って概算でき、表面利回り10%なら約10年、20%なら約5年です。
ただし、この年数は運用費などを差し引く前の収入で割った、最も短い目安にとどまります。
経済産業省の検討会の試算には回収年数の記載がなく、示されている結果はIRRだけです。
実際の回収年数は、表面利回りから求めた年数より長くなります。
運用費を差し引いた実質利回りが7%なら約14年で、容量の低下で収入が年々減ると、さらに延びます。
IRRがマイナスになる前提では、20年間の手取りを合計しても投資額に届かず、運転期間の中で回収できない計算です。
系統接続や建設に時間がかかると、運転を始めるまでの期間も回収年数に加わります。
表面利回り・実質利回り・IRRの違い
表面利回りは年間の収入を投資額で割った数字、実質利回りは収入から運用費などの年間の費用を差し引いてから割った数字です。
IRRは、お金が戻る時期の早い・遅いまで含めて、事業期間全体の収益を年率で表します。
3つの違いは次のとおりです。
| 利回りの種類 | 計算のしかた | 差し引くもの | 比べるときの使い方 |
|---|---|---|---|
| 表面利回り | 年間の収入 ÷ 投資額 | なし | 収入の大きさを大まかに比べる |
| 実質利回り | (年間の収入 − 年間の費用)÷ 投資額 | 運用費・保守費・固定資産税などの年間の費用 | 毎年手元に残るお金で比べる |
| IRR(内部収益率) | 投資額と毎年の手取りから、事業期間全体の収益を年率で出す | 年間の費用に加え、途中の交換や撤去の費用もかかる年に反映 | お金が戻る時期まで含めて比べる |
資料に「利回り◯%」とだけ書かれていたら、表面・実質・IRRのどれかを先に確かめます。
借入を使う案件では、事業全体のIRRと自己資金に対するIRRも別の数字になるため、どちらの数字かもあわせて確かめます。
表面利回りと実質利回りの差は、運用費の大きさそのものです。
チクデンが確認した他社の高圧・2MW・8MWh級の案件の資料では、年間の運用費の内訳は次のとおりです(チクデン調べ、2026年9月時点)。
| 項目(高圧・2MW・8MWh級の一例) | 構成比 | 概算(年間・税抜) |
|---|---|---|
| 需給管理費用(運用会社に払う費用) | 約5割 | 約1,000万円 |
| 設備メンテナンス費用 | 約2割 | 約370万円 |
| 固定資産税・O&M(運転・保守)・資産管理の費用 | 約3割 | 約570万円 |
| 合計 | ― | 1,900万円規模 |
表の金額には、廃棄費用・保険・地代が含まれていません。
また、需給管理費用は市場価格の想定で変わり、この資料でも想定を変えると合計は2,200万円台になります。
提案の運用費を見るときは、表の3つの項目に加えて、廃棄費用・保険・地代が入っているかの確認も必要です。
法人税の計算で設備費をいつ費用にするかも、年ごとの手取りを左右する点です。
系統用蓄電池の利回りが資料で大きく違う理由
系統用蓄電池の利回りは、市場価格の見通し・収入の数え方・初期費用の範囲と補助金・運用費と劣化(容量の低下)・契約の形の5つの前提で、資料ごとに大きく変わります。
高い利回りを見たら、5つのうちどの前提が数字を押し上げているかを確かめます。

1.市場価格の見通し
市場価格がこの先どこまで下がると置くかは、同じ案件の利回りを大きく変える前提です。
見通しの違いは、事業期間の毎年の収入に積み重なって表れます。
蓄電池が増えると、市場価格は下がる方向に動きます。
足元の需給調整市場は応札が足りない状態が続いており、2026年時点では蓄電池にとって良い環境とされています。
ただし、蓄電池の導入が進めば調整力の供給が増えるため、単価には下がる圧力がかかる見込みです。
卸電力市場の値差も同じように、蓄電池の導入や系統の整備が進むと縮む可能性があります。
系統用蓄電池が収入を得る市場は、次の3つです。
| 市場 | 何に対して支払われるか | 収入の決まり方 |
|---|---|---|
| 卸電力市場(日本卸電力取引所、JEPX) | 安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電した電気の値差(kWh) | 日々の価格の差で変わる |
| 需給調整市場 | 需要と供給のずれを埋める力(調整力) | 落札の量と単価で変わる |
| 容量市場 | 将来の供給力(kW) | 年単位の契約で決まる |
どの市場の収入を何割と見ているかで、利回りは大きく動きます。
2.市場ごとの収入の数え方
同じ時間の充放電を複数の市場の収入として重ねて数えると、利回りは実際より高く出ます。
1つの蓄電池が同じ時間に出し入れできる電気の量には上限があり、卸電力市場で売った容量を、同じ時間に需給調整市場にも出すことはできません。
一方、容量市場の対価は将来の供給力に対して支払われるため、ほかの市場の収入と重ねて受け取れる仕組みです。
長期脱炭素電源オークション(脱炭素の電源に原則20年の固定収入を与える入札制度)で落札した場合、ほかの市場で得た利益の約9割は還付の対象です。
この還付を差し引かずに市場の収入を足している資料は、利回りが高く出ます(2026年9月時点の制度)。
3.初期費用に含める範囲と補助金
利回りの分母になる初期費用に何を含めるかで、同じ案件でも利回りは変わります。
たとえば、蓄電システムと工事の費用だけで計算した利回りは、土地や開発の費用まで含めた案件の総額で計算した場合より高く出ます。
1kWhあたりの初期費用を数え方別に並べると、次のとおりです。
| 初期費用の数え方 | 1kWhあたり | 出どころ(時点) |
|---|---|---|
| 経済産業省の検討会の試算で置いた建設費 | 3万〜8万円 | 経済産業省の検討会資料(2025年3月) |
| 国の補助事業の蓄電システム価格と工事費(受変電設備などを含まない) | 約6.8万円(5.4万円+1.4万円) | 経済産業省の検討会資料(2024年度の見積額からの推計) |
| 土地や開発の費用まで含めた案件の総額(高圧・2MW・8MWh級で6億円台後半) | 約8.8万円 | チクデン調べ(2026年9月) |
※チクデン調べの1kWhあたりの額は、総額を案件の実際の蓄電容量(7.5MWh前後)で割った値です。
8MWhに約8.8万円を掛けると約7億円になり、総額(6億円台後半)とは一致しません。
補助金を差し引いた初期費用で計算すると、分母が小さくなる分、利回りは高く出ます。
ただし、補助金は申請しても採択されるとは限らないため、補助金なしの場合の利回りもあわせて確かめます。
また、補助金で取得した設備は、決められた期間内に国の承認なく売却や転用ができないなどの条件付きです。
4.運用費と劣化の置き方
運用費と、容量の低下や機器の交換を事業期間にどう入れるかで、実質利回りとIRRは変わります。
運用費の大きさは、表面利回り・実質利回り・IRRの違いで示した内訳のとおりです。
蓄電池は使ううちに、ためられる電気の量(容量)が少しずつ減ります。
たとえば経済産業省の検討会の試算では、容量が毎年1%ずつ下がり、20年で8割になる前提です。
そのため、容量の低下を見込まない資料や途中で機器を交換する費用を入れていない資料は、後半の年の収支が実際より良く出ます。
5.運用するアグリゲーターと契約の形
市場で運用して収入が変わる契約と、固定の収入を受け取る契約では、同じ利回りの数字でも上振れと下振れの幅が違います。
市場取引で得る収入の大きさは、運用を任せるアグリゲーター(複数の電源をまとめて市場で取引する事業者)の力量と切り離せません。
これに対してトーリング契約は、運用の権利を渡して固定の対価を受け取る契約です。
対価がすべて固定の形では、収入の見通しが立てやすい代わりに、市場が上振れしたときの利益の大部分は相手方が受け取ります。
長期脱炭素電源オークションで得る固定収入も、収入が安定する分だけ上振れが小さい点は同じです。
利回りを比べるときは、収入が市場で変わる前提か、固定の前提かを先に確かめます。
※参照:2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(2025年3月7日、作成:三菱総合研究所)p.25・31・33・38/経済産業省
※参照:三菱UFJ信託資産運用情報 2026年9月号「系統用蓄電池事業への投資について」p.5〜12/三菱UFJ信託銀行
※参照:容量市場 長期脱炭素電源オークション募集要綱(応札年度:2026年度、2026年9月2日)p.10・46/電力広域的運営推進機関
※参照:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第22条(財産の処分の制限。期間は同法施行令第14条、2026年10月時点)/e-Gov法令検索
系統用蓄電池の利回りを下げるリスク
系統用蓄電池の利回りを下げる主なリスクは、市場価格の下落・制度の変更・劣化と故障・系統接続の遅れの4つです。
提案の数字を見るときは、4つのリスクのどれが起きると、収入・費用・運転期間のどこが動くかを確かめます。

市場価格が想定より下がる
市場価格が想定より下がると毎年の収入が減り、利回りが下がって回収年数も延びます。
蓄電池の参入が増えるほど、需給調整市場の単価や卸電力市場の値差は下がる方向です。
加えて、卸電力市場の1日の値差は年度による違いも大きく、2019〜2023年度では最も小さい年度と最も大きい年度で4倍近い開きがありました。
制度の変更で収入の前提が変わる
市場のルールが変わると収入の前提そのものが変わり、提案時の収益シミュレーションが成り立たなくなることがあります。
たとえば需給調整市場では、募集する量や商品の区分、応札のルールの見直しが続いています。
同じように、容量市場や長期脱炭素電源オークションも、募集の条件や還付のルールが見直されると収益に直接響く制度です(2026年9月時点)。
劣化と故障で稼働が落ちる
想定より早く容量が下がったり、故障で止まったりすると、市場に出せる量と時間が減って収入が下がります。
システムや通信の障害で市場の求めに応えられない場合は、収入を失うだけでなく、ペナルティを課されることもあります。
劣化と故障への備えになるのは、容量の保持率やサイクル寿命(充放電を繰り返せる回数)の保証と、長期の保守契約の中身です。
系統接続が遅れて運転開始がずれる
系統接続の手続きや工事が長引くと蓄電所の運転開始が遅れ、収入の始まりが後ろにずれる分だけ回収年数が延びます。
運転開始までの期間に加えて、系統につなぐ工事のうち事業者が負担する工事費負担金の額も、事業性を大きく左右する要素です。
しかも工事費負担金は、接続検討(つなげるか・費用はいくらかを送配電事業者に調べてもらう手続き)の回答より、その後の検討で増える場合もあります。
そのため、提案の数字に入っている負担金が確定した額か見込みの額かも、確かめておきたい点です。
※参照:2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(2025年3月7日、作成:三菱総合研究所)p.37・78/経済産業省
※参照:三菱UFJ信託資産運用情報 2026年9月号「系統用蓄電池事業への投資について」p.12〜14/三菱UFJ信託銀行
提示された収益シミュレーションの確かめ方
提示された収益シミュレーションは、利回りの種類と前提を確かめたうえで、複数の提案を同じ前提にそろえて比べます。
下振れした場合の数字もあわせて見ると、提案の数字がどの前提に支えられているかが分かります。

確認したい前提条件
収益シミュレーションで、利回りの数字を比べる前に確かめたいのが、その数字を出した5つの前提です。
前提ごとに数字がどう変わるかは、系統用蓄電池の利回りが資料で大きく違う理由で示しました。
5つの項目と、資料で見る所は次のとおりです。
| 確かめる前提 | 確かめること | 資料で見る所 |
|---|---|---|
| 利回りの種類 | 表面・実質・IRRのどれか。IRRなら事業全体か自己資金に対してか | 利回りの数字の注記 |
| 収益 | 市場ごとの単価をいくらで何年続くと置いたか。同じ時間の収入を重ねていないか | 収入の内訳と市場価格の想定 |
| 運用と設備 | 1日の充放電の回数と稼働日数。容量の低下と機器の交換の置き方 | 運用の条件と設備の仕様 |
| 費用 | 初期費用に土地・工事費負担金・開発費を含むか。運用費の内訳 | 初期費用と運用費の内訳 |
| 資金 | 補助金込みか。借入の割合と金利 | 資金計画 |
数字を出せない項目があれば、その理由を聞きます。
前提をそろえた比べ方
複数の提案を比べるときの基本は、市場価格・稼働の条件・補助金の有無を同じ値に置き直してから利回りを並べることです。
あわせて、市場価格が想定より下がった場合など、下振れの場合の数字も出してもらいます。
前提を1つ変えたときの利回りの動き方が、数字の高さの理由を知る手がかりになります。
利回りが高いこと自体は、提案を疑う理由になりません。
注意したいのは、前提を開示しない提案と、下振れの場合の数字を示さない提案です。
提案を出す会社を選ぶときは、施工・運用・保守の実績に加えて、シミュレーションの前提を自ら説明できるかを見ます。
EPC会社は、蓄電所の設計・機器の調達・建設をまとめて請け負う会社です。
系統用蓄電池の利回りに関するよくある質問
低圧の系統用蓄電池も利回りの考え方は同じですか?
利回りの種類と前提を確かめる考え方は同じですが、低圧の数字は高圧の数字と同じ物差しで比べられません。
低圧(50kW未満)は投資額の規模が小さく、1台では需給調整市場に入札できる量に届かないため、アグリゲーターが複数をまとめて入札する形です。
収入の得方が高圧と違うため、低圧の提案は低圧の試算や案件と比べます。
融資を使うと利回りはどう変わりますか?
融資を使うと、自己資金に対する利回りは上がりやすくなる一方、下振れには弱くなります。
収入が想定を下回っても返済額は変わらないため、手元に残るお金の減り方が大きくなる点に注意が必要です。
借入の割合と金利で数字が変わるため、資料の利回りが事業全体に対するものか、自己資金に対するものかの確認が必要です。
太陽光発電の投資と利回りの見方は同じですか?
系統用蓄電池の利回りは、FITの太陽光発電の投資とは見方が違います。
FITの太陽光発電は、決められた価格で一定期間、電気を買い取ってもらえます。
一方、系統用蓄電池にはこの固定価格の仕組みがありません。
トーリング契約や長期脱炭素電源オークションで固定の収入を得る形を除けば、収入は電力市場の価格で決まります。
そのため、同じ利回りの数字でも、系統用蓄電池は前提が外れたときの下がり方まで確かめておきます。
※参照:三菱UFJ信託資産運用情報 2026年9月号「系統用蓄電池事業への投資について」p.12/三菱UFJ信託銀行
系統用蓄電池の利回りについてまとめ
提案を比べる前に社内で決めておきたいのは、自社の資金計画で受け入れられる回収年数と、下振れした場合に許容できる利回りの下限です。
この2つが決まっていれば、提案ごとに下振れの場合の数字を受け取ったとき、受け入れられる範囲かをすぐに見比べられます。
手元に提案があれば、資料に書かれていない前提を洗い出し、提案した会社に確かめるのが次の一歩です。
洗い出しには、確認したい前提条件の表が使えます。
