需給調整市場とは何?仕組みや参加するメリットをわかりやすく解説

初めて需給調整市場について耳にする方は少し難しく感じるかもしれませんが、私たちが毎日安心して電気を使えるようにするための大切な仕組みです。

この記事では、需給調整市場とは何か、どんな仕組みなのか、他の電力市場との違いや企業が参加するメリットなど、わかりやすく整理してお伝えします。

需給調整市場とは?初心者にもわかりやすく解説

需給調整市場とは

需給調整市場(EPRX)とは、電気の供給と使用量のバランスを整えるための市場です。

電気は貯めにくく、使う量と作る量を常に同じにする必要があります。そこで電力会社は、発電所や蓄電池を持つ事業者から、必要なときに電気を増やしたり減らしたりできる力をあらかじめ買っておきます。もし電気が足りなくなったら発電を増やしてもらい、余ったら減らしてもらうことで停電や無駄を防ぎ、電気を安定して届けることが可能です。

調整力が必要となるタイミング

需給調整市場において調整力が必要とされるタイミングは、電気の需要(使う量)と供給(作る量)のバランスが崩れた時です。電気は性質上、貯めておくことが難しいため、常に需要と供給を一致させる同時同量を維持しなければなりません。具体的に必要となるのは、主に以下の3つのケースです。

予測とのズレ(短周期・長周期の変動)

日々の需要予測や、太陽光・風力といった再生可能エネルギーの発電予測が、実際の値と外れた際にその差分を埋めるために発動します。

突発的なトラブル(事故対応)

発電所の故障による停止や、送電線の事故などで急激に供給力が失われた際、周波数の低下を防ぐために即座に調整力が投入されます。

急激な需要変化

夕方の点灯ピークや工場の稼働開始など、需要が急峻に変化する時間帯に、通常の発電計画だけでは追従しきれない分をカバーします。

需給調整市場が作られた背景と目的

需給調整市場は、日本の電力システムを取り巻く電力システム改革の進展と、再生可能エネルギーの拡大を背景に2021年創設されました。

かつて停電を防ぐための調整力は、各地域の電力会社が自エリア内の発電所から個別に調達していました。しかし、出力が不安定な太陽光や風力発電が増えるにつれ需給の不確実性が高まり、リアルタイムでの柔軟な調整が重要になっています。需給調整市場が作られてからはエリア外も調整力を調達できるようになり、運用コストも抑えられています

主な需給調整市場の目的は、需給の不一致を解消し電力の安定供給を維持することと、調整力の調達を公平かつ効率的に行うこと、透明性の確保と市場参入の促進を図ることです。需給調整市場は発展途上であり、今後も市場のルール変更がされる可能性は高いです。

需給調整市場と卸電力市場・容量市場の違い

需給調整市場・卸電力市場・容量市場は、いずれも電力取引の仕組みですが役割が異なります。

需給調整市場と卸電力市場・容量市場の違い

需給調整市場は、実需給直前やリアルタイムで計画と実績のズレを調整するための調整力(ΔkW)を取引し、周波数維持など系統安定化を担います。卸電力市場は、主に前日までに電力量(kWh)を売買し、需要と供給の計画を立てる場です。容量市場は将来の供給力(kW)を確保するための仕組みで、発電所などに対し将来の供給余力を維持する対価を支払います。

需給調整市場の仕組みと取引の流れ

需給調受給調整の仕組みと市場に参入した際の取引の流れを解説します。

需給調整市場が取引される仕組み・流れ

需給調整市場が取引される流れは、以下の4ステップです。

1. 募集と入札(オークション)

2. 約定(選定)

3. 待機と指令(運用)

4. 精算(支払い)

まず、一般送配電事業者(TSO)がこれくらいの調整力が欲しいと募集をかけます。その後発電所や蓄電池を持つ事業者やアグリゲーターが入札し、価格の安い順に採用されるメリットオーダーというルールで落札者が決まります。無事落札されると、送配電事業者の求めに応じて電力を放電できる立場(権利)が得られます。対価として、主にスタンバイ料と実際に動いた分の2種類、料金が支払われます。

需給調整市場の対価

需給調整市場で扱われる商品一覧

需給調整市場で扱われる商品は、一次調整力・二次調整力①・二次調整力②・三次調整力①・三次調整力②の5つです。リソースの応動性能や目的に応じて多様な商品が取引されています。

一次調整力二次調整力①二次調整力②三次調整力①三次調整力②
指令間隔
(自端制御)
0.5~数十秒数秒から数分/または5分
数秒から数分/または5分30分
応動時間10秒以内※5分以内5分以内15分以内60分以内
継続時間5分以上※30分30分30分30分
特徴短時間で急な電源脱落に対応需要変動を細かく調整再エネの予測誤差を調整

※オフライン監視の場合は、応動30秒以内、継続時間「設定なし」

一次調整力から三次調整力①までの4つの市場は、実需給の1週間前に入札・落札が行われます。対して、三次調整力②は、実需給の前日に募集量が提示されます。これは、ゲートクローズ(GC)までの再エネ予測誤差に対応することを目的としているためです。ブロックごとに募集量が提示されるため市場変動の影響を受けやすい側面もありますが、その分、多様なリソースが参入しやすい柔軟な設計です。

各商品の役割は、指令に対する応動スピードでも分けられています。二次調整力②は比較的素早い応動が求められる一方で、三次調整力①は比較的緩やかな応動で対応する特性を持ちます。これにより、事業者は自社の強みを活かした柔軟な応札ができ、系統全体の安定運用と効率的な調整力の確保が両立されています。

※参照:需給調整市場かいせつ資料/一般社団法人電力需給調整力取引所

需給調整市場に参加するメリット

需給調整市場への参入は、リソースを持つ事業者にとって経済性と社会貢献の両面で、大きな価値を生み出します。主なメリットは以下の3点です。

  • 新たな収益を得られる
  • 使っていない時間もマネタイズできる
  • 再エネの安定化

最大の魅力は、これまでにない新たな収益機会を得られることです。電力を供給するだけでなく、出力を調整できる能力そのものが価値として評価され、柔軟な運用が収益につながります。実際に発電や放電をしていない待機時間や、活用できていない蓄電池においても、いつでも調整できる状態に対して報酬が支払われるため、価値を生まなかった時間もマネタイズが可能です。

また、太陽光や風力など出力が変動しやすい再生可能エネルギーと組み合わせることで、その不安定さを補完し、電力供給の安定化に貢献できます。これにより、再エネの導入拡大を支えながら、事業としての収益性向上も期待できる点が大きなメリットです。

需給調整市場に参入するためのポイント

系統用蓄電池が需給調整市場に参入するポイントを解説します。

信頼できるアグリゲーター選び

需給調整市場への参入において、信頼して運用を任せられるアグリゲーター(特定卸供給事業者)を選定できるかどうか非常に重要です。登録事業者数は、2026年4月時点で約150社です。

アグリゲーター選定の際、特に重視すべき3つの主要基準を整理しました。

  1. 市場への精通度と運用実績
  2. 制御技術とサポート体制
  3. 収益性と運用費

アグリゲーターとは、分散している小さなエネルギーリソースをまとめ上げ、一つの大きな発電所のように制御する事業者です。全国に点在している太陽光発電や蓄電池などが儒教調整市場へ参加するため、アグリゲーターがこれらを統合制御し、一つの発電所のように機能させるVPP(バーチャルパワープラント)を構築しています。

※参照:特定卸供給事業者一覧/経済産業省 資源エネルギー庁

蓄電池のスペック確認とルール変更への対応

需給調整市場に参入するためには、まず蓄電池のスペックが市場要件を満たしているかを確認することが重要です。各調整力メニューごとに出力応答速度、持続時間、制御精度などが細かく求められています。各商品のリクワイヤメントが満たされていない場合、システムの改修が必要になる可能性があります。

また、需給調整市場は制度設計の見直しやルール変更が比較的頻繁に行われているため、最新の情報を把握することが不可欠です。特に応札条件やペナルティ規定の変更は、収益性に直結するため注意が必要です。

※参照:需給調整市場について/経済産業省 資源エネルギー庁

最新の需給調整市場事情・ガイドライン

2021年に需給調整市場のガイドラインが策定され、2023年から2026年まで毎年3月に改定されています。

需給調整市場ガイドライン2026年の変更点

需給調整市場に関する質問

需給調整市場に関する質問についてお答えしていきます。

需給調整市場の取引における約定価格や上限価格は?

需給調整市場の約定価格は、2026年度以降から上限価格が変更されました。

募集量現在の3σ相当量から1σ相当量※まで削減
上限価格現在の19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分に引き下げ
※市場における競争状況に改善が見られない場合、10円、7.21円/ΔkW・30分等と段階的に引き下げ

近年系統用蓄電池の接続検討申込の件数が急増しており、今後新規リソースの参入によって需給調整市場への応札量増加も予想されています。

※参照:需給調整市場について/資源エネルギー庁

需給調整市場の前日取引化とは何ですか?

需給調整市場の前日取引化とは、電気の需給バランスを整える能力の取引を、実需給の前日までに確保する仕組みのことです。

これまでの多くは、週間や前々日までに行われていました。しかし太陽光発電などの出力予測や需要予測の精度が低く、予測のずれから必要以上に調整力を確保しなければいけない課題がありました。前日取引化で前もって調達することで急な調達を減らせるようになり、コスト低減につながります。前日取引化はシステム改修面を踏まえ、2026年度から実現されます。

※参照:2026年度の前日取引化に向けた課題整理について/需給調整市場検討小委員会 事務局

過去の需給調整市場の取引実績や価格の推移はどのくらい?

電力需給調整力取引所より発表されている2025年度上期(4月~9月)の取引実績は下記の通りです。

商品取引実績価格(単価)の推移
一次調整力67.2%3.6円/ΔkW・30分程度で推移しており、前年度より高単価で推移
二次調整力①50.9%3円/ΔkW・30分で推移しており、前年度と比較して月によってばらつきはあるものの、同程度の水準
二次調整力②2.6%月による変動があるものの、前年度と同じ水準の価格で推移
三次調整力①16.8%2~3円/kW・30分程度で推移しており、月による違いはあるものの前年度と同水準
三次調整力②2.2%昨年の募集量削減係数の導入以降、平均単価は1円/ΔkW・30分程度で推移

しかし2021年に儒教調整市場が開設されてから、調整力の調達不足は継続的に生じており、市場取引活性化の仕組みが進められています。

※参照:2025年度上期の取引実績について/一般社団法人 電力需給調整力取引所

まとめ:需給調整市場を理解してビジネスに活かそう

需給調整市場は、電力の安定供給を支える重要な仕組みです。制度の仕組みや参入方法を正しく理解することで、新たなビジネス機会の創出や収益拡大にもつなげることができるでしょう。まずは自社にとっての関わり方を整理し、一歩踏み出してみてください。