系統用蓄電池とは?ビジネスモデル・3つの収益源・事業化リスクを解説

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力の需給バランスを調整する設備として、系統用蓄電池の重要性が高まっています。

系統用蓄電池は、電力が余る時間帯に充電し、不足する時間帯に放電することで、電力系統の安定化や再生可能エネルギーの有効活用に役立つ設備です。

本記事では、系統用蓄電池の仕組みや収益を得る方法、事業化の流れ、主なリスクまで、検討時に押さえておきたいポイントを解説します。
>>系統用蓄電池とは

目次

系統用蓄電池とは

系統用蓄電池とは、一般送配電事業者の送配電網に接続し、電力の充放電を行う蓄電設備です。

電力が余る時間帯に充電し、不足する時間帯に放電することで、電力の需給バランスの調整や再生可能エネルギーの有効活用に役立ちます。

家庭や工場の電気代削減を主な目的とする蓄電池とは異なり、系統用蓄電池は電力市場での取引や調整力の提供など、事業用途で運用されるのが一般的です。

系統用蓄電池の仕組み

系統用蓄電池は、電力が余る時間帯に充電し、不足する時間帯に放電することで、電力の需給バランスを調整する仕組みです。

電力は、需要と供給のバランスを常に一致させる必要があります。バランスが崩れると周波数が変動し、電力設備や電力供給に影響を及ぼす可能性があるため、系統用蓄電池が需給調整の役割を担っています。

実際の運用では、EMS(エネルギーマネジメントシステム)やアグリゲーターが、電力市場の価格や需給状況に応じて充放電を制御します。これにより、電力の安定供給を維持しながら、効率的な運用が行われています。

家庭用・産業用蓄電池との違い

系統用蓄電池は、家庭用蓄電池や産業用蓄電池とは用途や役割が異なります。

家庭用蓄電池は、電気代の削減や停電時の非常用電源として利用されることが一般的です。産業用蓄電池は、工場や商業施設などでピークカットやBCP対策を目的に導入されます。

一方、系統用蓄電池は、電力市場での取引や需給バランスの調整を目的として、電力系統に接続して運用される事業用設備です。そのため、設備を設置するだけでなく、系統接続や市場運用、アグリゲーターとの連携まで含めて事業を進める必要があります。

項目系統用蓄電池家庭用蓄電池産業用蓄電池
接続先一般送配電事業者の送配電網住宅などの需要家側設備工場・商業施設などの需要家側設備
主な目的需給調整・市場運用停電対策・電気代削減BCP対策・ピークカット
主な運用者発電事業者・蓄電事業者・アグリゲーターなど一般家庭企業
設置場所系統接続が可能な事業用地住宅の敷地内工場・商業施設などの敷地内

系統用蓄電池が必要とされる理由

系統用蓄電池は、電力を蓄える設備であるだけでなく、電力系統の安定運用を支える重要な役割を担っています。

近年は、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需要の変化により、電力の需給バランスを調整する役割がこれまで以上に重要となりました。

こうした背景から、系統用蓄電池への期待が高まっています。

ここでは、系統用蓄電池が必要とされる主な理由を解説します。

1.再生可能エネルギーの普及が進んでいるため

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統用蓄電池の重要性が高まっています。

太陽光発電や風力発電は、天候や時間帯によって発電量が変動する電源です。導入量が増えるほど、発電量が需要を上回る時間帯や、電力が不足する時間帯も生じやすくなります。

系統用蓄電池は、余った電力を充電し、必要な時間帯に放電することで、再生可能エネルギーを有効活用し、電力系統の安定運用に貢献します。

2.電力の安定供給を支えるため

系統用蓄電池は、電力が余る時間帯に充電し、不足する時間帯に放電することで、電力の需給バランスを調整します。需給調整市場では調整力としても活用されており、電力系統の安定運用を支える重要な設備です。

電力は、需要と供給のバランスが崩れると周波数が乱れ、電力品質の低下や停電につながる恐れがあります。そのため、発電量と消費量を常に一致させることが重要です。

3.電力系統の増強を補完するため

電力需要の増加や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、送配電設備の負荷が高まる地域もあります。

こうした状況では、送配電設備を増強するだけでなく、系統用蓄電池を活用して電力を充放電することで、電力系統への負荷を抑えられる場合があります。

系統用蓄電池は、電力需要や系統の状況に応じて電力を供給・吸収できるため、電力系統の安定運用を支える手段の一つとして活用が進められています。

系統用蓄電池のビジネスモデル|3つの収益源

系統用蓄電池は、電力を蓄えるだけの設備ではありません。電力市場の価格や需給状況に応じて充放電することで、収益を得る仕組みです。

主な収益源は、卸電力市場・需給調整市場・容量市場の3つです。それぞれ収益を得る仕組みが異なるため、ここから詳しく解説します。

卸電力市場

卸電力市場(JEPX)は、電力を売買する市場です。

系統用蓄電池では、電力価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電することで、売買差益による収益を目指します。

ただし、充放電時には電力損失が生じるほか、市場価格も需要と供給のバランスによって変動するため、単純な価格差がそのまま利益になるわけではありません。

収益を最大化するには、市場価格や需給状況を予測しながら、充放電や入札のタイミングを適切に判断することが重要です。そのため、高度な市場分析や運用ノウハウを持つアグリゲーターへ市場運用を委託するケースも多く見られます。

卸電力市場(JEPX)について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
卸電力市場とは?仕組み・種類をわかりやすく解説
JEPXとはどんな市場?仕組みや種類、取引価格について詳しく解説

需給調整市場

需給調整市場は、電力の需要と供給のバランスを維持するために必要な「調整力」を取引する市場です。系統用蓄電池は、一般送配電事業者からの指令に応じて充電量や放電量を調整できる能力を提供し、その対価として収益を得ます。

太陽光発電や風力発電は、天候によって発電量が変動するため、電力需給のバランスが崩れることがあります。短時間で充放電できる系統用蓄電池は、こうした変動に迅速に対応できることから、調整力として重要な役割を担っています。

需給調整市場では、指令に応じて確実に充放電できる運用体制が欠かせません。そのため、市場への入札や蓄電池の運用は、アグリゲーターへ委託されるケースが多くあります。

需給調整市場について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
需給調整市場とは?仕組みや参加するメリットをわかりやすく解説

容量市場

容量市場は、電力供給に必要な供給力を将来にわたって確保するための市場です。

系統用蓄電池は、将来にわたって安定した電力供給に貢献できる設備として評価され、その対価として報酬を受け取れます。

卸電力市場や需給調整市場のように、日々の充放電によって収益を得る仕組みではありません。将来の供給力を提供する対価として報酬が支払われることが特徴です。

一方で、容量市場へ参加するには国が定める要件を満たす必要があります。また、オークションで落札されなければ収益を得られないため、卸電力市場や需給調整市場と組み合わせて運用されるケースも多く見られます。

容量市場について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
容量市場とは?仕組みやオークションに参加するメリットを簡単に解説

系統用蓄電池の市場規模と今後の見通し

系統用蓄電池市場は、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の安定化を背景に、国内で市場が拡大しています。

一方で、市場規模だけでなく、制度や事業環境の変化を踏まえて事業性を判断することが重要です。

ここでは、国内の導入見通しと市場拡大を後押しする政策について解説します。

国内の導入見通し

国内では、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の安定化に向けた取り組みを背景に、系統用蓄電池の導入が加速しています。近年は、大規模な蓄電所の建設計画や新規参入が相次ぎ、市場は今後も拡大が見込まれています。

資源エネルギー庁の資料では、国内の系統用蓄電池の導入量は2030年に14.1~23.8GWhとなる見通しが示されています。

また、経済産業省は2026年に「蓄電池・電源産業戦略」を公表し、2030年代半ばまでに国内製造基盤150GWh/年の確立などを目標に掲げました。

ただし、市場の成長性だけで事業性を判断することはできません。 系統用蓄電池事業は、土地条件や系統連系、収益モデル、アグリゲーターの運用方針などによって収益性が大きく変わるため、市場動向とあわせて個別案件の条件を確認することが重要です。

導入見通しを見る際の注意点

  • 接続検討中の案件が、すべて契約・稼働するわけではない
  • 試算では、事業化率や稼働率に一定の前提条件が置かれている
  • 接続検討容量と実際の導入容量は分けて見る必要がある
参照:資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」経済産業省「蓄電池・電源産業戦略」
  • 10%・20%事業化ケース:接続検討申込案件がコスト低減等により契約・稼働に至る割合をシナリオ別に想定
  • 稼働率の想定:契約申込案件のうち、実際に稼働する割合を約70%(陸上風力の実績値)と仮定し試算

市場拡大を後押しする政策

系統用蓄電池市場の拡大を後押ししている要因の一つが、国による制度整備や支援策です。

再生可能エネルギーの導入拡大や2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、経済産業省は蓄電池産業の競争力強化や国内製造基盤の拡充を進めています。

2026年には「蓄電池・電源産業戦略」が公表され、2030年代半ばまでに国内製造基盤150GWh/年の確立などを目標に掲げています。

また、長期脱炭素電源オークションや各種補助制度など、系統用蓄電池への投資を後押しする制度も整備されています。こうした政策により事業環境は改善しつつありますが、案件ごとに収益モデルや制度の適用条件は異なるため、政策だけでなく個別の事業性もあわせて確認することが重要です。

参照:

系統用蓄電池事業を始める流れ

系統用蓄電池事業は、土地を確保すれば始められるものではありません。

用地や系統接続条件の確認から設備の建設、市場運用の準備まで、段階ごとに進める必要があります。

ここでは、事業開始までの基本的な流れを解説します。

用地と系統接続条件を確認する

系統用蓄電池事業では、まず用地と系統接続条件を確認します。土地があっても、すべての場所で事業化できるわけではありません。

特に重要なのが、電力系統へ接続できるかどうかです。接続可能容量や工事負担金、連系時期などによっては、事業計画の見直しが必要になる場合もあります。

また、土地についても、面積や用途地域、接道状況、造成の必要性、周辺環境、消防対応などを総合的に確認することが重要です。

これらの条件を事前に整理することで、その後の設備設計や事業計画をスムーズに進めやすくなります。

用地について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
系統用蓄電池に適した土地とは?設置条件・変電所との距離・探し方を解説

接続検討・契約申込みを行う

用地や設備計画がまとまったら、一般送配電事業者へ接続検討を申し込みます。なお、最大受電電力1万kW以上の設備では、一般送配電事業者または電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ申し込む場合があります。

接続検討では、系統へ接続できるかどうかに加え、接続可能な条件や必要な工事、工事負担金、連系時期などを確認します。

接続条件によっては、追加工事や設備計画の変更、事業計画の見直しが必要になる場合もあります。接続検討の結果を十分に確認し、事業化が可能と判断したら契約申込みへ進みます。

設備を設計・調達・建設する

接続条件や事業性を確認した後は、設備の設計・調達・建設を進めます。系統用蓄電池は、主に以下の設備で構成されています。

  • 蓄電池本体
  • PCS
  • EMS
  • 受変電設備
  • 消防設備
  • 監視システム

一般的には、EPC事業者が設備設計や機器の調達、施工、系統連系対応などを担います。

設備を選定する際は、各設備の仕様や施工実績、保守体制なども確認しながら、事業計画に適した設備構成を検討しましょう。

EPCについて詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
【一覧付き】系統用蓄電池に対応するEPC会社を紹介|比較ポイントも解説

市場取引の体制を整えて運転を開始する

設備の建設が完了したら、市場取引の体制を整えたうえで運転を開始します。系統用蓄電池は設備を設置するだけでは収益を生み出せず、卸電力市場(JEPX)や需給調整市場、容量市場などで適切に運用することが重要です。

一般的には、アグリゲーターが充放電計画や市場取引を担い、収益の最大化を目指します。また、運転開始後もO&M事業者による保守・点検や設備監視を継続しながら、安定した運用を行います。なお、収益性は市場環境や運用方針によって変動するため、運用開始後も継続的な改善が欠かせません。

系統用蓄電池事業の主なリスク

系統用蓄電池事業は、中長期的な成長が期待される一方で、事業化や運用にはさまざまなリスクがあります。収益性や事業の実現性を正しく判断するためには、事前にリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、事業を始める前に押さえておきたい主なリスクを解説します。


系統接続に時間と費用がかかる

系統用蓄電池を事業化するには、一般送配電事業者などによる接続検討を受ける必要があります。

検討の結果、系統増強工事が必要と判断された場合には、工事負担金が高額になることがあります。また、回答や工事にも時間がかかるため、想定していた運転開始時期に間に合わない可能性もあります。

そのため、土地を取得する前に、系統接続の可能性や想定される費用、スケジュールを確認することが重要です。


市場価格や制度変更によって収益が変動する

系統用蓄電池の収益は、卸電力市場(JEPX)や需給調整市場、容量市場などでの取引によって得られます。そのため、市場価格の変動や制度改正の影響を受けやすく、想定どおりの収益を確保できない場合があります。

こうしたリスクを抑えるためには、複数の市場を組み合わせた運用や、市場環境の変化に応じた運用方針の見直しが重要です。また、制度改正の動向を継続的に把握し、柔軟に対応できる体制を整えることも求められます。


蓄電池の劣化・事故対策が必要になる

蓄電池は、使用年数や充放電回数に応じて容量や性能が徐々に低下します。充放電の頻度や運用方法、温度環境などによって劣化速度は異なるため、運用状況によっては想定より早く交換が必要になる場合があります。

事業収支や安全性を検討する際は、次のポイントも確認しましょう。

  • 蓄電池セルの交換費用
  • PCSや空調設備などの更新費用
  • 発熱・火災を防ぐための安全対策
  • 運転開始後の定期点検・保守体制

特に、設備の設計や保守が不十分な場合には、発熱や火災などの事故につながるおそれがあります。そのため、設備導入時にはBMSによる状態管理や冷却設備、消防設備などの安全対策を確認するとともに、運転開始後も定期的な点検や保守を継続し、設備の状態を適切に管理することが重要です。

耐用年数について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
関連記事:
系統用蓄電池の耐用年数は?メンテナンス方法や減価償却についても解説


接続検討案件のすべてが事業化されるわけではない

接続検討を申し込んだ案件のすべてが事業化につながるわけではありません。接続検討の結果によっては、工事負担金が想定以上に高額となったり、連系までに長期間を要したりすることで、採算性を確保できないケースもあります。

また、用地条件や許認可、資金調達などの課題によって事業計画の見直しや中止が必要になる場合もあります。そのため、接続検討容量と実際に導入・運転開始に至る容量は必ずしも一致しません。事業性を十分に検討したうえで、契約や設備投資を進めることが重要です。

系統用蓄電池に関するよくある質問

系統用蓄電池について、導入や制度に関してよく寄せられる質問をまとめました。記事内で紹介しきれなかったポイントもあわせて解説します。

Q1. 系統用蓄電池に補助金は利用できますか?

はい。系統用蓄電池は、国や自治体が実施する補助金制度の対象となる場合があります。

ただし、募集時期や対象設備、補助内容などは毎年度見直されるため、利用できる制度は導入時期によって異なります。導入を検討する際は、最新の公募情報を確認しましょう。


Q2. 系統用蓄電池の導入にはどのような手続きが必要ですか?

一般的には、用地の選定や系統接続の検討を行ったうえで、接続検討の申込みや必要な許認可、設備の設計・施工などを進めます。

必要な手続きや期間は、設備規模や設置場所によって異なるため、事前にスケジュールを確認しながら計画的に進めることが重要です。


Q3. 系統用蓄電池はどのような事業者が導入していますか?

主に電力会社や発電事業者、新電力、商社、デベロッパーなどが導入しています。

近年は、再生可能エネルギーの導入拡大や電力市場の整備を背景に、土地オーナーや投資会社など、新たな事業として参入する企業も増えています。

まとめ

系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの普及や電力需給の安定化を支える重要な設備です。一方で、事業として成功させるためには、用地や系統接続、市場運用、制度、リスクなどを総合的に検討する必要があります。

事業化を進める際は、自社だけで判断するのではなく、アグリゲーターやEPC、メーカーなどと連携しながら、事業計画や収益性を十分に確認することが重要です。

「チクデン」では、系統用蓄電池事業を検討している事業者様へ、用地選定から系統接続、アグリゲーター・EPC・メーカーの選定、事業化まで無料でサポートしています。系統用蓄電池事業をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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