FIP転(FIP転換)とは?蓄電池併設のメリット・注意点と手続き

FITの太陽光発電所をFIP転(FIP転換)して、蓄電池を併設するかどうかは、主に「出力制御の状況」「FITの残存期間」「融資の状況」「蓄電池の設置場所」の4点から判断します。

特に確認しておきたいのが、出力制御による売電機会の減少です。
2026年度末以降、地域ごとに出力制御の運用が見直され、FITのまま運用する発電所は出力制御の対象となる機会が増える可能性があります。

一方、FIPへ移行して蓄電池を併設すれば、発電した電気を蓄え、売電する時間帯を調整できるようになります。
ただし、すべての発電所で収益改善につながるとは限りません。

この記事では、FIPへの移行と蓄電池の併設を検討する際に確認したい4つの条件を整理したうえで、FITを継続する場合との違いや、蓄電池でできること、注意点と手続きの流れを解説します。

FIP転とは:FITの調達価格(売電単価)と残存期間を引き継いだまま、電気を市場などで販売し、国からプレミアム(売電価格への上乗せ)を受け取るFIP制度へ切り替えること。
記載の情報は2026年10月5日時点のものです。50kW以上のFIT太陽光発電所を前提にしています。

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目次

FIP転+蓄電池が向いている発電所

FIP転と蓄電池の併設で収益が改善しやすいのは、出力制御を受ける回数が多く、FITの残存期間が長い発電所です。
出力制御を受ける回数が多いほど、蓄電池にためて後から売電できる電気が増え、残存期間が長いほど、蓄電池の導入費用を回収する期間を確保できます。

4つの条件ごとに、向いている場合と向いていない場合を分けると次のとおりです。

条件向いている向いていない
出力制御の状況出力制御を受ける回数が多い(九州など)回数が少なく、順番が変わっても影響が小さい
FITの残存期間長い短く、蓄電池の費用を回収する前に終わる
融資の状況返済を終えている、または金融機関と条件を協議できる条件の変更について金融機関の同意が得られない
蓄電池の設置場所敷地内に設置できる設置場所がなく、用地を広げる必要がある

同じ九州の発電所でも、接続した時期の出力制御のルールや売電の契約形態によって結果は変わるため、最終的には自社の発電所の出力制御の実績をもとにした試算で判断することになります。

チクデンでは、「出力制御で売電量が減っている高圧の太陽光発電所に、蓄電池を併設してFIP転できるか知りたい」「FIP転を任せられるアグリゲーターや施工会社を比較したい」といったご相談に対応しています。

FITを継続した場合の影響

FITのまま運用を続けると、出力制御を受ける機会は今より増える見通しです。
これまで出力制御はFITとFIPを区別せずに行われてきましたが、今後はFITの発電所から先に制御し、FIPの発電所は後に回す順番に見直されます。

出力制御の順番の見直し。FITの発電所を先に、FIPの発電所を後に制御する順番になり、2026年度末から2027年度末にかけて地域ごとに始まる
系統ワーキンググループ第53回(2024年12月2日)・次世代電力系統ワーキンググループ第6回(2025年12月24日)資料をもとに作成

新しい順番は、一般送配電事業者(地域の電力会社の送配電部門)のシステム改修が終わった地域から、次の時期に始まる予定です。

地域開始予定
東北・四国2026年度末
中部・北陸・関西・中国・九州2027年度当初
沖縄2027年度中頃
北海道・東京2027年度末

※次世代電力系統ワーキンググループ第6回(2025年12月24日)資料1より

影響の大きさについて、国は簡易な式で試算しています。
FIPの発電所が全体の25%になると、FITの発電所が出力制御を受ける割合は見直し前の約1.33倍となり、現在20.0%の制御を受けている発電所であれば26.7%になる計算です。
2035年度の見込みでは、九州のFITの発電所が21%から28%、東北が21%から24%と、地域によって増え方に差があります。

あわせて国は、FIPへ移行した発電所への支援も拡充しています。
発電計画の作成などにかかる費用を補うためプレミアムに含まれているバランシングコストを、2025年度と2026年度は1kWhあたり1.00円増額しました。

※参照:次世代電力系統ワーキンググループ第6回 資料1(2025年12月24日)/経済産業省
※参照:系統ワーキンググループ第53回 資料1(2024年12月2日)/経済産業省
※参照:次世代電力系統ワーキンググループ第12回 資料1-1(2026年8月6日)/経済産業省
※参照:令和8年度以降の調達価格等に関する意見(2026年2月5日)/調達価格等算定委員会
※参照:再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第77回 資料1(2025年11月12日)/経済産業省

FIP転+蓄電池のメリット

FIP転と同時に蓄電池を併設すると、発電した時間帯とは別の時間帯に売電できるようになります。
FIPでは売電した時間帯の市場価格によって収入が決まるため、売電する時間帯を調整できることが、そのまま収益の差につながるからです。

FIP転と同時に蓄電池を併設してできる3つのこと。出力制御中の電気を夕方に売電できる、安い時間帯に充電し高い時間帯に売電できる、系統からも充電できる
資源エネルギー庁・審議会資料をもとに作成(2026年10月時点)

出力制御中の電気を夕方に売電できる

出力制御が行われるのは、春や秋の晴れた日の昼間など、電気の供給が需要を上回る時間帯です。
FITのままでは、この時間帯に発電できたはずの電気は売電できませんが、蓄電池を併設していれば、その電気をためておき、出力制御が解除された夕方以降に売電できます。

安い時間帯に充電し高い時間帯に売電できる

卸電力市場の価格は、太陽光の発電量が多い昼間に下がり、発電量が減る夕方から夜にかけて上がるのが一般的です。
昼間に発電した電気を蓄電池にためて夕方以降に売電すれば、同じ発電量でも1kWhあたりの売電単価を引き上げられます。

卸電力市場の価格が時間帯によってどう動くかは、下記記事で解説しています。
関連記事:系統用蓄電池とJEPXの関係とは?収益モデル・市場の仕組み・注意点を解説

系統からも充電できる

2025年4月から、FITから移行した発電所を含むFIPの発電所は、併設した蓄電池に系統(送電線・配電線の網)から充電できるようになりました。
発電していない時間帯でも、市場価格が安いときに系統から充電し、高いときに売電できます。

ただし、プレミアムの対象になるのは、発電所で発電した電気の分だけです。
売電した電気のうち発電所由来の分は、発電所からの充電量と系統からの充電量の比率で按分して算定されます。

導入費用と収益は、蓄電池の容量、出力制御の量、売電の契約形態によって大きく変わります。
試算を依頼する際にそろえておきたいのは、発電所の出力、過去の出力制御の実績、FITの残存期間の3点です。

国の補助金については、発電所に併設する蓄電池を対象としたSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ。国の補助金を執行する団体)の事業が2026年5月に公募を終了しており、2026年10月5日時点で次の公募の案内はないため、補助金を前提としない計画が必要です。
単独の蓄電所向けの補助金は、系統用蓄電池の補助金一覧にまとめています。

※参照:再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第77回 資料1(2025年11月12日)/経済産業省
※参照:再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 第58回 資料1(2023年12月19日)/経済産業省
※参照:令和7年度補正 再エネ電源併設蓄電システム等導入支援事業/SII 一般社団法人環境共創イニシアチブ

FIP転の注意点

FIP転によって出力制御の順番は後になりますが、その代わりに売電の手間とリスクを発電事業者が負うことになります。
FITを継続する場合との違いは、次の表のとおりです。

FITを継続する場合とFIP転後の違い。売り方・価格と期間・売電先・発電計画の4つの観点で比べた表
資源エネルギー庁「再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック」をもとに作成(2026年10月時点)

FITの認定は廃止になる

FIP転が認定されると、移行前のFITの設備は廃止の届出を出し、以後はFIPの発電所として運用します。
FITの固定価格を前提にした収支には戻らないものとして、残存期間の収支を見通しておくことが大切です。

売電先の確保と発電計画が必要になる

FITでは電力会社が固定価格で買い取り、発電計画の提出も求められませんでしたが、FIPでは売電先の確保、30分ごとの発電計画の提出、計画と実績のずれを精算するインバランス料金の負担が発電事業者の役割になります。
こうした業務は、アグリゲーター(複数の発電所の電気をまとめて市場で販売する事業者)との契約で委託するのが一般的です。

契約の形態は大きく2つあります。
市場価格に連動して売電する形態では、高く売れる時間帯を狙える一方で、収入は市場価格に応じて変動します。
アグリゲーターが定めた価格で買い取る形態(疑似FIT)では収入が安定しますが、価格変動のリスクをアグリゲーターが負う分、その費用が買取価格に反映される仕組みです。

アグリゲーターの探し方は、下記記事で解説しています。
関連記事:系統用蓄電池アグリゲーター一覧|比較・特徴や選び方を解説

融資契約の確認が必要になる

発電所の建設時に融資を受けている場合、その返済計画の前提は、FITによる安定した売電収入です。
FIP転によって収入の前提が変わるため、融資契約の内容によっては、金融機関の同意や融資条件の見直しが必要になる場合があります。
FIP転を検討する段階で融資契約を確認し、蓄電池の導入に新たな借入れを行う場合は、その審査も見込んでおくことが大切です。

蓄電池事業の融資審査で見られる点は、下記記事で解説しています。
関連記事:系統用蓄電池事業で融資を受けるには?審査のポイントと資金調達の方法を解説

出力制御の上限がなくなる

FITの太陽光発電所の中には、接続した時期によって、無補償で出力制御を受ける時間に上限があるルール(年30日、年360時間など)が適用されている発電所があります。
国の資料では、FIPの発電所は上限も補償もない「無制限無補償」の区分に位置づけられています。
制御の順番が後になっても、上限のあるルールで接続していた発電所は、上限がなくなる影響も含めた試算が必要です。

※参照:再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2026/資源エネルギー庁
※参照:操作マニュアル【FIP移行認定申請】第14版(2026年9月17日)/再生可能エネルギー電子申請
※参照:系統ワーキンググループ第52回 資料1(2024年9月18日)/経済産業省

FIP転の手続きと期間

FIP転の申請は、国のオンライン申請システムである再生可能エネルギー電子申請で行い、ログインには法人向けの共通認証IDであるGビズIDを使います。
蓄電池を併設する場合の流れは、次の4つの工程です。

  1. 売電先(アグリゲーター)と蓄電池の導入計画を決める
  2. FIP転を申請し、蓄電池の書類を参考書類として添付する
  3. FIP転の認定後、蓄電池の追加について変更認定(認定を受けた内容を変える手続き)を申請する
  4. 一般送配電事業者の手続きを済ませ、FIPでの売電と蓄電池の運転を始める
FIP転と蓄電池併設の手続きの4つの工程。売電先と計画、FIP転の申請(蓄電池の書類を添付)、変更認定の申請、接続の手続きと運転開始
資源エネルギー庁・再生可能エネルギー電子申請の案内をもとに作成(2026年10月時点)

工程1では、蓄電池の接続位置も決めます。
PCS(パワーコンディショナー。太陽光パネルの直流の電気を交流に変換する機器)より太陽光パネル側に蓄電池を接続すると、FITから引き継いだ価格が変わる場合があるため、施工会社と配置を検討する段階で確認しておくことが大切です。

蓄電池の工事を依頼する施工会社の探し方は、下記記事で解説しています。
関連記事:系統用蓄電池に対応するEPC会社を紹介|比較ポイントも解説

工程2と工程3は、2025年9月から審査が早くなりました。
FIP転の申請時に蓄電池の書類(変更認定申請書・単線結線図・配置図・仕様書)を参考書類として添付すると、資源エネルギー庁がFIP転の審査と並行して蓄電池の書類を事前に確認します。
ただし、蓄電池の変更認定を正式に申請できるのはFIP転の認定後で、変更認定の標準処理期間は、10kW以上の太陽光で3か月です。

工程4の一般送配電事業者の手続きは、電力広域的運営推進機関(OCCTO。全国の送配電のルールを定める機関)が定める送配電等業務指針(系統への接続の手続きなどを定めたルール)に沿って進みます。
四国電力送配電の案内では、既存の発電設備を変更する場合は原則として接続検討(系統に接続できるか、工事が必要かを調べる手続き)の申込みが必要で、指針に定める「要否確認」(接続検討が必要かどうかを先に確かめる手続き)の結果によっては省略できるとしています。
申込みの様式や窓口は一般送配電事業者ごとに異なるため、発電所がある地域の案内で確認してください。

※参照:太陽光発電におけるFIP移行時の蓄電池設置手続に係る審査の迅速化について(2025年8月12日)/資源エネルギー庁
※参照:お知らせ(2018年8月31日)/資源エネルギー庁
※参照:再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2026/資源エネルギー庁
※参照:契約手続き・申込書類(高圧・特別高圧)/四国電力送配電

FIP転に関するよくある質問

低圧(50kW未満)の発電所でもFIP転できますか?

資源エネルギー庁のガイドブックでは、事業用太陽光は、一定の条件を満たせば50kW未満でもFIPが認められるとされています。
再生可能エネルギー電子申請にも50kW未満の太陽光のFIP移行の手順が用意されていますが、条件は発電所ごとに異なるため、申請前に案内で確認してください。

FIP転+蓄電池と系統用蓄電池は何が違いますか?

FIP転+蓄電池は、すでに系統に接続している太陽光発電所に蓄電池を追加し、発電所の設備の一部として運用する形です。
系統用蓄電池(蓄電所)は蓄電池単体で系統に接続する事業で、新たに接続の申込みが必要になります。
系統用蓄電池の事業の仕組みは、系統用蓄電池とはの記事で解説しています。

2027年度以降もFIP転できますか?

可能です。
地上設置の事業用太陽光は2027年度以降、新規のFIT・FIP認定の対象外となりますが、2026年度までに認定を受けた発電所は引き続きFIP転の対象です。

※参照:再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2026/資源エネルギー庁
※参照:令和8年度以降の調達価格等に関する意見(2026年2月5日)/調達価格等算定委員会

FIP転のまとめ

FIP転と蓄電池の併設で収益が改善するかどうかは、出力制御の状況、FITの残存期間、融資の状況、蓄電池の設置場所の4点で判断します。
2026年度末以降、地域ごとにFITの発電所から先に出力制御を受けるようになるため、FITを継続するかどうかの判断材料を、早めにそろえておくことが大切です。

一方で、FITの認定が廃止になること、売電先の確保と発電計画が必要になること、融資契約の確認が必要になることは、検討の早い段階で確認しておきたい点です。
自社の発電所に当てはまるかどうかは、出力制御の実績をもとにした試算で判断してください。

FIP転と蓄電池の併設を検討している方は、チクデンにご相談ください。
発電所の条件に合うアグリゲーターや施工会社をご紹介します。

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